The previous night of the world revolution~F.D.~
ふぅ。

無事ルルシーを連れ込むことに成功しました。

「ブライダルフェア、楽しみですねっ。ルルシー」

「…何で俺がこんな目に…」

ふふ、喜んでる喜んでる。

ルルシーはシャイですから。本当は諸手を挙げて喜びたいのに、必死に我慢してるんですよ。

「ルルシーったら、そんなに恥ずかしがらなくても良いんですよ」

「別に恥ずかしがってる訳じゃねーよ」

「ほら、あっちを見てくださいよ。他にも同性カップルがいますよ」

「…本当だ…」

ルティス帝国じゃなかなか見られない光景ですよね。

俺達の他にも、ブライダルフェアに参加しているカップルは多数いるが。

その中の何組かは、同性カップルだった。

男同士で微笑み合ってるカップルもいれば、女同士でキャッキャしてるカップルもいる。

いやぁ。ジェンダーフリーですねぇ。

こういう多様性を、ルティス帝国ももっと幅広く認めるべきだと思います。

すると、そこに。

「はーい、お集まりのカップルの皆さーん」

ちっちゃな白い旗を持った白スーツ姿のお姉さんが、笑顔で現れた。

どうやら、式場スタッフのようだ。

「本日は無料体験ブライダルフェアイベントにご参加いただきまして、ありがとうございまーす。今日は皆さん、楽しんでいってくださいねー」

はーい、と声を合わせて答える一同。

「…なんか、バスツアーのガイドみたいなノリだな」

と、ルルシーが真顔で呟いた。

「えぇ。遠足にでも来た気分ですね」

しかも、幼稚園児のね。

「それじゃあ、早速会場を見ていきましょう。はい、こちらにどうぞー」

白い旗を目印に、ぞろぞろ、とついていくカップル一行。

広々とした結婚式会場を、自由に見て回ることが出来る。

更に、プロジェクターを使って、実際の挙式の映像を見せてくれた。

「こちらが、実際にこの式場で行われた結婚式になります」

ふーん。結構豪華な結婚式ですね。

「タキシードとドレスの色が黒だったら、完璧な式だったでしょうに…」

「…なんか誤解してるようだが、結婚式は普通白だからな」

え?ルルシー、今何か言いました?

きっと気の所為ですね。

映像の中では、指輪交換や誓いの言葉のシーンが映し出されていた。

いやぁ。憧れの瞬間ですよね。

「ルルシーと指輪交換…。誓いのキス…。想像しただけで素敵…」

「…おい、ルレイア。恍惚としてるところ悪いが、それはただの妄想だ」

「…じゅるっ」

「…涎を垂らすなよ」

おっと、済みません。不調法しました。

つい秘めたる欲望が。

…それにしても。

「シェルドニア王国の結婚式って、割と控えめですね」

「そうか…?…確かに、言われてみれば…」

こんな立派な高級ホテルで、さぞや派手な結婚式が行われてるんだろうと思いきや。

見せてもらったムービーしかり、この気軽な遠足のノリの式場スタッフしかり。

それから、ブライダルフェアに参加している他のカップル達もそう。

一世一代の結婚式に臨むという、その意気込み?みたいなものが感じられないのである。
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