The previous night of the world revolution~F.D.~
結婚式と言ったら、原則的には一生涯に一度だけの晴れ舞台。

人生の大きな節目ともされる、大切なセレモニーである。

しかし、どうやらシェルドニア人にとってはそうではないようである。

その証拠は、式場パンフレットに書いてあった。

「見てください、ルルシー。これ」

俺は、さっきガイドにもらった式場パンフレットの冊子の1ページを指差した。

結婚式の料金プランが書いてあるページである。

「ん?どれどれ…。…えーっと…」

ルルシーはそのページを見て、顔をしかめた。

「…ごめん。よく読めないんだが…二回目…?がどうのこうの…?」

「あ、済みません」

頑張ってシェルドニア語の読み書きを勉強していたルルシーだが、まだまだシェルドニア語だけで書かれた文章は難しいようだ。

じゃ、俺が翻訳しますね。

「要約するとですね…初めての結婚式は定価、2回目からは20%オフ、3回目は30%オフ…。で、5回目以降は半額で挙式、だそうです」

「は…!?2回目…3回目…!?」

ルルシーは愕然としていたが。

シェルドニア王国では、普通であるらしい。

「…何?どんどん結婚して、どんどん離婚して、どんどん再婚しろ、ってこと?」

とんでもないビッチ揃いですね。
 
「いえ、そうではなく…。このパンフレットを見たところ…」

シェルドニア王国にはかなり、面白い文化、風習があるようですね。

「シェルドニア人夫婦は、結婚年数の節目ごとに結婚式を開く文化があるそうです」

「え…?」

「例えば、結婚1年目の節目に結婚式、10年目でまた結婚式、30年目でまた結婚式…みたいな」

勿論、同じ相手とね。

紙婚式、錫婚式、銀婚式、金婚式…みたいなノリで。

節目の結婚記念日になる度、誕生日会を開くノリで、結婚式を行うらしい。

へぇー、面白い。

「成程…。それでリピーターには割引プランがあるのか…」

スタッフやカップル達が、妙に気楽な雰囲気なのも、そのせいですね。

一生に一度って訳じゃないから、結婚式に真剣味がない。

何ならここにいるカップル達も、何組かは既に夫婦で、2回目、3回目の結婚式の為にブライダルフェアに参加しているのかも。

「ついでに言うと、結婚式の値段もかなり安いですね」

「そうなのか…?俺、ルティス帝国の結婚式費用の相場なんて分からないから、これが安いのか高いのか分からないが…」

と、ルルシーはパンフレットの料金プランを見ながら言った。

「大体ルティス帝国の相場の5分の1くらいの費用ですね。更にここからリピート割もありますから、かなり安いです」

この値段だったら、確かに、気軽に何度も結婚式を開けますね。

ルティス帝国の結婚式に比べると、非常にリーズナブルな値段である。

シェルドニア人にとって結婚式というのは、強いて言うなら、海外旅行みたいな感覚ですかね。

なかなか頻繁には行けないけど、生涯に何度かは行く機会がある。みたいな。

「へぇ…。お前、よくルティス帝国の結婚式費用の相場なんて知ってるな」

おっ?良い質問ですね。

「勿論です。ルルシーとの結婚式の為に、常日頃から調べてますから」

「そうか…。…聞かなきゃ良かった」

えっ?

大丈夫。ルルシーと結婚式をする為だったら、俺、金に糸目は付けませんから。
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