The previous night of the world revolution~F.D.~
「えぇ。俺の恋人が、とても美味しいって」

俺は、流暢なシェルドニア語で答えた。

「誰が恋人だよ…適当言いやがって」

ルルシーは小声でぶつぶつ言ってますけど。

「そうですか。そちらのシェルドニアシロクロコダイルのステーキは、一度食い付いたら離れない、つまり一度結婚したらずっと離れないという意味を込めた、シェルドニア王国の結婚式では定番の料理なんですよ」

と、笑顔で教えてもらった。

へぇー。またそんな験担ぎを。

「…え?クロコダイル…。…ルレイア、クロコダイルって何だっけ…」

「ワニですね」

「…ワニ…」

ルルシー、顔が真っ青になって手が止まってますが、大丈夫ですか?

「で、デザート…。デザートはまともだよな…。ほら、白いプリンだし…」

と言って、ルルシーはデザートの白いプリンを食べていた。

ふむ、こちらのデザートも美味しそうですが。

「済みません。このプリンは何で出来てるんですか?」

俺は、シェルドニア語でガイドさんに尋ねた。

すると、良い笑顔で答えてくれましたよ。

「はい!そちらはシェルドニアシロミミズのパンナコッタですよ」

「へぇー。これパンナコッタなんですね」

「ぶふっ…」

何やら、ルルシーが横で噴き出してますけど。

甘く味付けされたミミズが、癖になる美味しさですね。

「だ、駄目だ…。ドリンク…。せめてドリンクだけはまともな…」

息も絶え絶えにそう呟き、ルルシーは白いしゅわしゅわしたドリンクを飲んで、必死に口直し。

「美味しいですか、ルルシー。ドリンクは」

「あ、あぁ…。これ…スパークリングワインみたいだな…。美味しいよ」

ふーん。スパークリングワイン…。

…果たして本当にそうですかね?

…すると、俺達のテーブルの向かい側で。

女性カップルが、ルルシーと同じくドリンクのグラスを手に取りながら話している声が聞こえてきた。

「んっ。このお酒、美味しいね」

「本当。やっぱり結婚式には、シェルドニアマッシロガラガラダルマニシキヘビのヘビ酒よねー」

「相手の心に巻き付いて離れない、っていう意味があるのよね」

…だ、そうですよ。ルルシー。

ちらりとルルシーの方を見ると、グラスを持ったまま固まっていた。

「…え…。これ…。ガラガラ…ダルマ…。…ヘビ?」

困惑して、食レポが進まないようですね。

俺はこのお酒、美味しいですよ。ヘビとは思えない芳醇な味と香り。

いやぁ、これぞ結婚式。

最高の気分ですね。
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