The previous night of the world revolution~F.D.~
おおっと。危ない。

俺は持ち前の危機察知能力を発揮して、華麗に神回避。

ルルシーの鉄拳は、空振りして宙を殴っていた。

「避けるな、この馬鹿!」

「ちょ、危ないじゃないですかルルシー!いきなり何するんですかっ?」

俺じゃなかったら当たってますよ。今の。

結婚式帰りに恋人を殴るなんて、許されざる行為ですよ。

「そんな準備してるなら、もっと早く言え!何で今日に至るまで黙ってたんだ」

え、いやー…。それは…。

「別に黙ってたつもりはないんですけど…。渡航出来るのはいつになるか分からなかったし、余計な期待させちゃ悪いかなと思って…」

「そうか、良いだろう。じゃあ黙ってたのは許してやる。…でもな」

え?

ルルシーの目が、ギロッと光っていた。

「二日前の時点で渡航の準備が出来てたなら、何でその時言わなかった?」

え?

…それはー…。…そのー…。

「…素直に言ったら怒りません?」

「あぁ。怒らないから素直に言え」

分かりました。

「二日前にそう言ったら、ルルシーはきっと、すぐに出発しようって言うでしょう?でも俺、今日はどうしてもブライダルフェアに参加したかったんですよ」

「…それで、その大事な情報を今に至るまで黙って、さっきのふざけた結婚体験イベントに参加させたんだな?」

ふざけてないですよ。素敵なイベントじゃないですか。ブライダルフェア。

楽しかったでしょう?

「えぇ、そういうことです」

ちゃんと素直に言いましたよ。

俺、とっても素直な良い子なので。

これで、ルルシーも怒らずに聞いてくれ、

「…ふざけんな、この馬鹿っ!」

「あぶなっ!」

ルルシーの鉄拳、2発目が炸裂。

いやぁ。俺じゃなかったら当たってますって。

「素直に言ったら怒らないって言ったじゃないですか!」

何で殴ろうとするんです?DVですよこれは。

「うるせぇ!怒るに決まってるだろ。どう考えても今日のイベントは無駄だっただろ!二日前にさっさと出発してれば良かったものを」

「えー…。だって…今日のブライダルフェアに当選してたし…」

キャンセルしたら勿体ないでしょう?手当たり次第に応募して、折角当たったんだから。

「…」

それなのに、ルルシーのこめかみに、ピキピキと血管が浮き出していた。

おぉっと。これは不味いですよ。

ルルシーの怒りゲージが、マックス振り切ってる予感。

「だってだって、シェルドニア王国で良いところなんて、これくらいしかないじゃないですか!」

俺は、必死にルルシーの怒りゲージを下げようと、弁明を試みた。

「合法的にルルシーと結婚式が出来るのは、この国だけなんですよ。ルティス帝国に帰ったら、忌々しい法律の壁のせいで、結婚式なんて夢のまた夢…」

唯一、シェルドニア王国の良いところ。

それは、男同士、女同士で合法的に結婚出来ることなのだ。

これだけでも、シェルドニア王国に来た意味があるというものじゃないですか。

「だから、このシェルドニア王国滞在中に、どうしても、どーーしてもルルシーと結婚式をしたかっ、」

「…言いたいことはそれだけか?」

いやん。ルルシーの顔が怖い。
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