The previous night of the world revolution~F.D.~
ーーーーー…さて、ルアリスに歓迎されて、箱庭帝国にやって来た俺とルルシー。

ルアリスに、帝都にある小さな家に案内された。

「ここなんですけど…。…どうですか?」

と、ルアリスが聞いてきた。

どうって、何がどうですか。

一軒家ではあるけど、中古の小さな平屋。

シェルドニア王国で住んでいたアパートに比べると、随分と慎ましい家である。

しかし、それが良い。

何より、部屋もカーペットも真っ白じゃない辺りが最高ですね。

「良い家じゃないですか。結婚式を終えたばかりの俺とルルシーに相応しいスイートハウスですよ」

「…え?結婚式?」

ぽかんとするルアリス。

「…あのな、ルレイアの戯言だから。気にしなくて良いからな」

ルルシーが、能面みたいな顔で答えた。

ちょっと。何でですか。

戯言も何も、本当にさっき結婚式してきたばかりでしょうよ。

…まぁ体験会なんですけど。

「え、えぇと…。何か必要なものがあったら教えてください」

「はい、そうします…。…あぁそうだ、これ」

「はい?」

俺は、シェルドニア王国の空港で買ってきたお土産を、ルアリスに差し出した。

これを渡すのを忘れちゃいけませんよね。

「お土産です。是非家族で食べてください」

「あ…ありがとうございます…」

ルアリスは、びっくりしてお土産を受け取った。

…そんな驚かなくても。

お世話になるんですから、俺だってお土産くらい渡しますよ。

敷金礼金代わりにね。

「ルレイア殿が…俺にお土産をくれるなんて…」

「失礼な。俺だって礼儀正しい大人なんですからね」

「そ、そうですか…。そうですよね…」

「大事に食べてくださいね。そのし…。ミミズ饅頭」

「ありがとうございま…。…え?ミミズ?」

目を真ん丸にして、固まっているルアリス。

どうしたんでしょうね。シェルドニア王国の名物土産なのに。

きっと喜んでくれたに違いない。

「じゃ、今日からここに住まわせてもらいますねー」

「は、はい…。えっ、ミミズってなん…。…えっ…!?」

俺が渡したセンス抜群のお土産を手に、あたふたしているルアリスを横目に。

俺とルルシーの、楽しい楽しい箱庭帝国亡命生活がスタートした。

いやぁ。俺達の未来は明るいですね。
< 444 / 522 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop