The previous night of the world revolution~F.D.~
全然楽しむ暇もないままに、パーティーが終了し。

マリーフィアをにこやかな笑顔で見送ったルレイアは、マリーフィアの姿が見えなくなると同時に。

「はー、ウザかった」

途端に、素のルレイアに戻った。

この落差よ。

「ルレイア…。お疲れ様」

俺は、ようやくルレイアの傍らに歩み寄った。

今だけは、全力でルレイアの肩を揉んであげたい気分。

お前はよく頑張ったよ。

「聞きました?ルルシー…。あの女、あろうことかシェルドニア王国に旅行したいとか抜かしてましたよ」

「あぁ、聞いたよ…」

「縦ロールお嬢様(笑)に洗脳されて、二度と帰ってこなければ良いのに」

落ち着け、落ち着け。

そう言いたくなる気持ちは分かるけども。

「ともあれ、無事に…って良いのかどうかは分からないけど、落とせそうじゃなかったか?」

「俺の手にかかれば、落とせないことはありませんよ。…とはいえ、あれはさすがに…拍子抜けするほどチョロかったですね」

…だよな。

上級貴族のお嬢様だというから、もっと気位が高くて、高飛車で、偉そうに威張っているものかと…。

いや、むしろ逆か?

蝶よ花よと育てられたお嬢様だからこそ、他人に対して警戒心がない。

いずれにしても、あの性格はチョロい。

ルレイアにかかったら、あっという間に手中に収めることが出来るだろう。

…なんか申し訳ない気もするけど、今回ばかりは気にしてられない。

「あの調子なら、あと2、3回会えば、問題なく落とせるでしょう」

「そうか…。さすがだな、ルレイア…。俺はお前の引き出しの多さに感心したよ」

「引き出し?」

「話題の引き出し…。色んなこと知ってるじゃないか。上級貴族のマリーフィアと、あんなに対等に…」

「そりゃあ、これでも俺も、元上級貴族ですからね」

「…あっ…」

しまった。俺はまた…とんでもない失言を。

裏社会のルレイア・ティシェリーの姿を見慣れているせいで、忘れてしまっていた。

そうだった。ルレイアだって…元々は、あのマリーフィアと同等の地位にいたのだ。

マリーフィアと話が合うのも、当然のことだ…。

「あの…ルレイア…。…ごめん」

「謝らなくて良いですよ。別に気にしてませんからね」

…ルレイアはそう言うけれど。

謝らなければ、俺の気が済まなかった。

しかし、ルレイアは本当に、全く気にしていないようで。

「さぁ、目的も済ませたことですし、『青薔薇連合会』本部に帰りましょう」

「…あぁ。分かった」

…色々と肝を冷やしたが、今日の目的は、無事に達成した。

あとは、カミーリア家の連中が、『ローズ・ブルーダイヤ』の紛失に気づく前に。

ルレイアが、マリーフィアを完全に落とすことを祈るばかりである。
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