The previous night of the world revolution~F.D.~
そのまま、5分くらい待っていると。

「…終わりましたよ」

「あ、ルレイア…」

全身に返り血を浴び、両手の剣から血を滴らせたルレイアが、俺のもとに戻ってきた。

…そうか。終わったか。

結局、彼らの復讐は叶わなかった。

同情はしない。俺は彼らではなく、ルレイアの味方だから。

「無事で良かったよ」

「当たり前じゃないですか。素の実力だったら、3人束になっても俺には敵いませんよ」

まぁ、そうだろうな。

俺でさえ、ルレイアと戦ったら無傷では済まないくらいだし。

あいつらだって、直接ルレイアと戦って勝てるはずがないことは分かっていたはずだ。

だからこそ、こんな回りくどい真似をしてルレイアを追い詰めようとしたんだろうし。

…残念だったな。届かなくて。

「また心配してました?」

「いや、それは…」

「もー。心配性なんですから、ルルシーは」

…茶化すなよ。

「じゃ、胸を貸してください。ぎゅーってして」

何だと?

「ふざけんな、そんな場合じゃ…」

「…本気で言ってるんですよ」

えっ?

ルレイアは、スッと俺に近寄って。

自分の顔を、俺の胸に埋めた。

「る…ルレイア?」

「…」

いつもの、浮ついた冗談じゃなかった。

ルレイアの身体が、小刻みに震えていた。

「…!お前、やっぱり何処か怪我して…」

「…違います。ただ、ちょっと…不安になっただけです」

「…」

不安。

返り血を全身に浴びたルレイアは、子供のように震えて、子供のように恐怖を訴えていた。

だから俺は、大人が子供にするように、その震える身体を抱き留めた。

「…大丈夫だ。何があっても、俺がお前を守るよ」

「えぇ、分かってます…。俺を恨む人は少なくないでしょう。こういうことは、これから先何度でも起こるはずです」

ルレイアだけじゃない。

マフィアの幹部なんてやっていれば、嫌でも各方に敵を作ることになる。

俺だって、アイズやアリューシャやシュノ達だって同じだ。

いつ、誰に後ろから刺されてもおかしくない。

その覚悟はしている。

「彼らの闇よりも、俺の抱える闇の方が深かった…。それだけの話です。分かってます…。ただ俺は、自分の闇の深さが怖い」

「…そうか」

臆病者、と罵ることはなかった。

そんな奴がいたら、ルレイアを罵る奴がいたら、俺がぶん殴ってやる。
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