The previous night of the world revolution~F.D.~
ルルシーの誤解が解けて、一安心…となった訳だが。

そろそろ、俺も我慢の限界が近づいている。

…何の我慢の限界か、って?

よく考えてみろ。俺は今、ルルシーにハグされている状態である。

色んなものが色々とムラムラするのは当然というものだろう?

出来ればこのまま押し倒したいんだけど、さっきまでルルシー、超激おこでしたからね。

怒ってる時に押し倒されたら、余計激昂しかねないでしょう?

ルルシーを押し倒したいのは山々ですが、嫌われたくはありませんからね。

一応、先に確認を取っておこうと思う。

「…ルルシー。まだ怒ってます?」

「いいや…。もう怒ってないけど…」

「じゃあ、そろそろ押し倒して良いですか?」

「…」

俺は真面目にそう言ったのに、ルルシーは無言で、能面みたいな顔して。

スッ…と、俺を離し、距離を取った。

ちょっと。何ですかそれは。

「…何でそんなに離れるんですか?」

「当たり前だろ。ふざけんなってさっき言ったよな?」

え。それまだ有効だったんですか?

「ふざけてませんよ。俺はいつだって真面目です。本気で、これはそのまま押し倒して仲直りのえっちを、」

「…余程絶交されたいらしいな?」

眉を吊り上げるルルシー。

「ちょ、違いますって。可愛い冗談じゃないですか。可愛い冗談!」

まぁ、8割くらいは本気でしたけどね。

分かりましたよ、真面目になる。真面目に話すから許してください。

「良いか、用が済んだら戻ってくるって聞いて、少しは安心したけどな…。でも、快く送り出すとは言ってないからな」

え、そうなんですか?

「カミーリア家の女と結婚するのは、この際別に良い」

「良いんですか」

「良くないけどな、それも。それより俺が気にしてるのは…お前がウィスタリア家に…貴族に戻ることだ」

あぁ…成程。

未だにルルシーは、貴族云々の話題が出る度に、一生懸命俺を遠ざけようとしてくれますもんね。

もう…アレから何年も経つというのに、未だに…。

…過保護過ぎますよ。全く。

「お前を…また、あの場所に…」

「…心配しなくても大丈夫ですよ、ルルシー」

俺は珍しく、真面目な顔と真面目な口調で言った。

…いや、俺はいつでも真面目ですけど。

「今更ウィスタリア家に戻ったって、俺は揺らぎません。何処に居ても、どんな身分になっても、俺は『青薔薇連合会』の幹部、ルレイア・ティシェリーです」

今更ウィスタリアの名前を返されたとしても、それは所詮仮初めのもの。

それに、ウィスタリア家の連中も、俺が本気で家に戻るとは考えないはずだ。

…一人を除いて、の話だが。

「…信じて良いのか。本当に大丈夫なのか?お前が傷つくことがあったら、俺は…」

「信じてくださいよ。何処に行ったって、俺は必ずあなたの隣に戻ってきます…。待っててください」

「…」

ルルシーは、じっと俺の両目を見つめた。

そんな情熱的な視線を向けられたら、心がときめくじゃないですか。

「…分かった。信じて待ってる…けど、もし何か…困ったことや辛いことがあったら、すぐに言うんだぞ。それは約束してくれ」

ですって。

ルルシーったら、あなたって人は相変わらず…心配性で、優しくて。

俺の救世主ですね。

「分かりました。約束します」

「…よし。言ったな?約束だからな。破ったら絶交だぞ」

ちょっと。針千本より重い罰じゃないですか。

ここに、絶対破れない約束が成立してしまった。
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