The previous night of the world revolution～F.D.～

ルファディオを無視して、俺は自分の生まれ育った家の中を歩いた。

屋敷の中は、俺がいた頃となんら変わりなかった。

まるで、昔にタイムスリップしたようだった。

俺の記憶の中にあるウィスタリア家と、なんら変わらない…。全く進歩のない家。

…見ているだけで、色々な思い出したくないことが思い出されて気分が悪い。

無駄に広い屋敷の中を歩き、まず目指したのは。

かつて、自分が暮らしていた部屋だった。

鍵が掛かっているかと思ったが、意外なことにその部屋は開いていた。

…部屋の中は、俺が暮らしていた頃と全く変わっていなかった。

12歳かそこらで家を出て、全寮制の帝国騎士官学校に入って以来、僅かな休暇の期間を除いて、この家に戻ってくることはなかった。

それから、あの忌まわしい学校を卒業した後も、家には戻らず、そのまますぐ帝国騎士団に入った。

その後…俺の人生を揺るがしたあの事件があって…。そして、ウィスタリアの名前を失った。

この屋敷に足を踏み入れる権利を、永遠に奪われた。

暗い闇の世界が、『青薔薇連合会』が俺の居場所になって…帰るべき家になって。

生まれてから12年間を過ごしたこの部屋に、二度と帰ることはないと思っていたのに。

とっくに物置きになっていてもおかしくなかったこの部屋は、俺が出ていった時と変わっていない。

まるでこの部屋だけ、ずっと時が止まっていたかのようだ。

その間に、色んなことがあった。

言葉で言い尽くせないほど色んなことが…たくさん…。

何年も誰も使っていなかったはずなのに、家具もカーペットも、全く埃を被っておらず。

ベッドのシーツも皺一つ、シミ一つなかった。

窓もピカピカに磨かれ、テーブルに置かれた花瓶には、美しいユリの花が活けられていた。

…わざわざ白いユリを選んだのは、俺に対する嫌味か何かか？

試しに、部屋のクローゼットを開けてみる。

そこには、俺が出ていった当時着ていた服が、そのまま入っていた。

今すぐにでも着られるように、きちんと洗濯され、アイロンもかけられていた。

ご丁寧なことだ。

どの服も、今の俺には少し小さい。

何より、今の俺の趣味じゃない。

「…だっさ…」

過去の自分が着ていた服を見て、出てきた感想がこれである。

普通は、懐かしいって思うところなんでしょうけど。

ダサいの何のって。何？この白い服。

白とか青とか赤とか、センスの欠片もない服ばかり。

なんてことだ…。さながら、出会ったばかりの頃のシュノさんみたいな服のラインナップ…。

まとめて全部、ゴミ袋に突っ込んで捨てたい。

大体、こんなゴミを何だって、後生大事に取っておいてあるのか。

…その答えは、単純明快だった。

「…戻っていたのか。…ルシファー」

「…あぁ。あなたですか」

背後から、忌まわしい俺の昔の名を呼ぶ者がいた。

振り返らなくても、それが誰なのかは分かっている。

ルシェ・エリザベート・ウィスタリア。

帝国騎士団副団長であり、現在ウィスタリア家の実質当主であり…。

そして、生物学上、俺の姉に当たる人物である。