The previous night of the world revolution~F.D.~
…しかし、ルシェは。

「…分かってる。お前が理由もなく、この家に戻ってくるはずがないということは」

あぁ、そうですか。

それは良かった。そこまで馬鹿じゃなかったんですね。

「きっと、何か事情があるんだろう…。『青薔薇連合会』の為か?それとも、お前の友人の…ルルシーという、」

「不快ですね。勝手に俺のルルシーの名前を呼ばないでください」

あなたなんかに呼ばれたら、ルルシーの美しく清らかな名前が穢れる。

しかも、誰の許可を得てルルシーを呼び捨てにしているのか。

様付けで呼べ。

「俺が何故戻ってきたのかなんて、あなたに教える義理はない…と、言いたいところですが」

「…」

「誤解されたままは嫌ですしね。秘密を守ることが出来ると約束するなら、教えてあげますよ」

言うまでもなく、ルシェは帝国騎士団側の人間だ。

つまり、俺にとっては敵。

だが、この先俺がウィスタリア家の人間として、カミーリア家に婿入りするなら。

本意ではないが、帝国騎士団側にいる人間の…つまり、ルシェの手助けが必要になるかもしれない。

使えるものは何でも使う。打てる手は打っておく。

それに、これまで帝国騎士団には、散々貸しを作ってやったのだ。

たまには借りを返せ。

元々、無駄に清廉潔白な性格のルシェのこと。

そんな約束は出来ない、と断わる可能性も残っていたが…。

「…分かった。それがお前の為に出来ることなら、約束は守ろう」

「…」

きっぱりと、あっさりと決意して、そう言った。

気持ち悪い。虫酸が走る。

俺の為だって?…何様のつもりだ、この女。

「俺は裏社会から足を洗ったんじゃない。どんな手段を使ってでも、カミーリア家に潜り込む必要が出来たんです」

「どういうことだ?」

「…実は…」

俺は、カミーリア家の『ローズ・ブルーダイヤ』について話した。

『ブルーローズ・ユニオン』傘下の構成員が、カミーリア家から『ローズ・ブルーダイヤ』を盗み出したこと。

このことが発覚すれば、『ブルーローズ・ユニオン』のみならず、『青薔薇連合会』もただでは済まない。

だから、事が発覚する前に、ダイヤを元の場所に戻し、一件落着とする為に。

俺がカミーリア家の次女、マリーフィアに接触したこと。

そのマリーフィアから結婚を申し込まれたものの、さすがに上級貴族のマリーフィアと、裏社会の俺が結婚する訳にはいかない。

そこで体面を保つ為に、俺をウィスタリア家に戻し。

ウィスタリア家の次男として、正式にカミーリア家に婿入りすることにしたこと…。

これらの経緯を、俺はルシェに話して聞かせた。
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