The previous night of the world revolution~F.D.~
しばらく、俺は双眼鏡を覗いていたのだが。

「あっ…。ルレイアが教会の中に入っていくわ」

同じく、真剣な顔で双眼鏡を覗いていたシュノが声を上げた。

いよいよ結婚の為の大事な儀式が始まるらしく、ルレイアもマリーフィアも、教会の中に入っていった。

アイズも、他の参列者に混じって同じように教会に入っていく。

…こうなると、もう中の様子は見えない。

儀式を終えて、再び出てくるのを待つしかない。

「くっ…。ここまでか…」

「ルレイア、見えなくなっちゃった…」

しょぼーん、と落ち込むシュノ。

しかし。

「ふっ、甘いな先輩方。一体、何の為にアイズ先輩を結婚式に参列させたと思ってるんだ?」

仮面越しに、ドヤ顔のルリシヤである。

何だと?

「こちらルーチェスです。アイズ総長、聞こえますか?」

ルーチェスが、耳元につけたインカムに向けて喋っていた。

ま、まさかお前ら。

『聞こえてるよ。人前だから、小声でしか話せないけど』

小型スピーカーから、アイズの声が。

『そっちはどう?見えてる?』

「少々お待ち下さい…。はい、起動しました」

き、起動?

ルーチェスの手元にはタブレット端末があり、そこにカメラの映像が映し出された。

そこは、なんと結婚式が行われている教会の中だった。

「ど…どうなってるんだ?それ…」

「アイズ先輩のネクタイピンに、小型カメラを取り付けさせてもらったんだ」

「そのカメラの映像が、こちらにリアルタイムで届いてるんですよ」

マジかよ。

「お前ら…。それは盗撮だぞ…」

「双眼鏡で覗いてる時点でアウトなのでは?」

仰る通り。

なんてことだ…。俺に物言いをつける資格はないのか…。

「アイズ先輩視点だから、自由にカメラを動かせないのが玉に瑕だがな。しかし、それでも中の様子は充分見えるはずだ」

「す…凄いな…」

本当だ。タブレット端末の画面に、教会の中の様子が映し出されている。

しかも、音声付き。

アイズも、カメラを通して見ている俺達の為に、中の様子がよく見えるよう、カメラを動かさないよう気を遣ってくれているようだ。

「おっ、嫁が歩いてんぞ」

「俗に言うバージンロードですね」

ヴェールを被ったマリーフィアが、しずしずとバージンロードを歩き。

司祭とルレイアが待つ祭壇に向かう様子が、タブレット端末に映し出されていた。

花嫁にとっては、いよいよという瞬間だな。

「ルルシー、辛いわよね」

「は?」

横を振り向くと、シュノが俺を励ますかのように、

「本当なら、あのバージンロードを歩いてるのはルルシーのはずだったのに」

「ぶはっ…」

思わず、俺は噴き出してしまった。

…何言ってんだよ、シュノ。それはお前だろ?

「辛かったら見なくて良いのよ、ルルシー。無理しないで」

「ありがとうな、シュノ…。でも、その心配は全く無用だからな」

余計なお世話だ!と声を大にして叫びたい。

誰がバージンロードなんか歩くか。

「おっ、遂に辿り着いたぞ」

「いよいよメインイベントが始まりますね」

ルリシヤとルーチェス、超わくわく。

お前ら、完全にこの結婚式をエンターテイメントとして見てるな。

悪趣味にも程があるだろ。
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