The previous night of the world revolution~F.D.~
そして、誓いの言葉の後は。

いよいよ、結婚式の山場がやって来た。

指輪の交換と、そして…あの…アレ。

誓いのキスである。

ルレイアとマリーフィアは、お互いに指輪を交換し、互いの左手の薬指に指輪を嵌めた。

美しい結婚指輪が、二人の指でキラキラと光っていた。

「あの結婚指輪、エメラルドだな」

「『ローズ・ブルーダイヤ』ほどじゃないですけど、あれも相当な値打ちがありますよ」

二人の結婚指輪を見て、ルリシヤとルーチェスがそう言った。

お前ら、タブレット端末越しなのに、よくそんなところまで見えるな。

さすが、宝石に造形の深いカミーリア家。

大粒のエメラルドを結婚指輪に使うとは。

「元気を出してね、ルルシー。あれは演技なのよ。ルレイアは本気であの女の人と指輪を交換したんじゃないのよ」

またしても、俺を慰めてくれるシュノ。

「うん…。ありがとうな…」

別に良いよ、俺は。

ルレイアが誰と指輪を交換しようと、エメラルドの結婚指輪を嵌めようと。

どうぞご自由にって感じだ。

そして、指輪を交換した二人は、いよいよ。

「おっと、誓いのキスだな」

「来た…!結婚式のメインイベント…!」

食い入るようにタブレット端末を見つめる、ルリシヤとルーチェス。

このゲス共め。

「おっと、アリューシャ先輩はまだ早いぞ。アイズ先輩に、『アリューシャには見せないでね』と言われてるからな」

「ほえー」

ルリシヤは、そっとアリューシャの両目を手のひらで押さえてガードした。

アイズの奴。またアリューシャを甘やかしやがって。

何歳だと思ってるんだよ。

「…!ルルシー、ルルシーも辛いわよね。見なくて良いのよ」

シュノが慌てて、俺を気遣ってそう言った。

うん。もう何も言うまい。

「ルレイア師匠のキスは裏社会イチだと言われてますからね。どんな男も女も、一瞬で骨抜きにしてしまうと評判なんですよ」

と、ルーチェスが自慢げに教えてくれた。

今年一番どうでも良い情報をありがとう。

「唇の使い方、舌の動かし方…。絶妙なストロークで相手をねっとりうっとりと…」

「やめろ、気色悪い」

「さすがは僕の師匠です。いつか僕も、ルレイア師匠のようになりたいものです」

「…」

ふざけんな、目指さんで良い…と、

言いたいところだったが、もうツッコミを入れるのも疲れてきた。

「おっ、いよいよだぞ」

ルリシヤが声を上げ、恐る恐るタブレット端末の画面を見ると。

画面の中で、ルレイアがそっとマリーフィアのヴェールを取っていた。

…マジで、いよいよの瞬間がやって来た。
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