The previous night of the world revolution~F.D.~
さて、飛行機が無事に箱庭帝国の空港に着陸し。

入国審査を滞りなく終えて、荷物を受け取った。

「まぁ。小さな国だと思ってましたけど、意外と空港は広いんですのね。ルティス帝国のそれに負けてませんわ」

鎖国状態だった頃の箱庭帝国のイメージが強いのか。

マリーフィアは、着陸した空港の広さに驚いていた。

滑走路には、世界各地から箱庭帝国にやって来た、あるいは、これから箱庭帝国から世界各地に飛んでいく旅客機が、あちらこちらに停まっていた。

「この空港も、革命後に大規模な整備をして、これだけの広さに拡張したそうですよ」

「へぇ、そうなんですのね」

これも、ルアリスが行った開国の一環である。

箱庭帝国は海に面した国だが、ルティス帝国近郊の穏やかな海域とは正反対で。

箱庭帝国周辺の海域は非常に険しく、荒れた海が広がっており、従って海路を使った移動は危険である。

海路が使えない以上、陸路、及び空路による移動に限られる。

そこで、国の玄関となる空港の整備に力を入れたのだ。

これもルアリスの努力の賜物と思うと、奴の師匠である俺は鼻が高いですね。

あいつ、俺が育てたんですよ。凄いでしょ?

と、心の中で自慢する。

「それで、ルナニアさん…」

「はい」

「これから、どうしますの?」

マリーフィアは、こてんと首を傾げて尋ねた。

今回の旅行については、「全て俺に任せて欲しい」と申し出て、俺が主導することにした。

旅行って楽しいですけど、旅行の段取りを決めるのって面倒じゃないですか。

その面倒を、俺が自ら引き受けた形である。

これは別に、マリーフィアに面倒を押し付けるのが可哀想だから、という殊勝な理由ではなく。

ただ単に、マリーフィアに付き合わされるなんて御免だからである。

しかも、俺は自ら旅行の段取りを引き受けたが。

実は、俺がしたのは、箱庭帝国行きの飛行機のチケットを取っただけ。

その後のことは、全てノープランである。

観光地への移動手段も、ホテルの手配も、一切していない。

え、そんなんで大丈夫なのか、って?

大丈夫に決まってるじゃないですか。

だって、ここは箱庭帝国で。

俺は、ルレイア・ティシェリーなのだから。

「業務用」の笑顔を浮かべ、俺はマリーフィアを安心させるように言った。

「大丈夫ですよ、マリーフィアさん。…ちょっと待っててくださいね。今、『専属ガイド』を呼びますから」

俺は、上着のポケットからスマートフォンを取り出し。

とある人物に、電話を掛けた。
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