The previous night of the world revolution~F.D.~
『あぁ。突然済みませんねルファディオさん。俺です。ルレイアです』

電話の向こうから、予想通りの人物の声が聞こえてきた。

声だけで背筋が冷たくなるのは、この人だけである。

…そして、会う度に俺の名前を間違えるのは、わざとなんですか。

「…あの、俺ルアリスです」

『あぁ。そういやそんな名前もついてましたね』

こんな名前しかついてませんよ。最初から。

なんて、下手なことを口に出したら恐ろしい目に遭うので、黙っておくことにする。

「え、えぇと…。ルレイア殿、お久し振りです。最後に会ったのは確か、ルティス帝国総合大学の視察に行った時、」

ルレイア殿の出方を探る為にも。

まずは、気さくな挨拶から始めようと思ったのだが。

『ルアリス』

「は、はい?」

俺の精一杯の気さくな挨拶を、ルレイア殿はあっと言う間に遮った。

『俺、今箱庭帝国の国際空港にいるんですけど』

「えっ?」

思わず耳を疑った。

てっきりルティス帝国から、国際電話を掛けてきているものと思っていたのに。

ルレイア殿、今箱庭帝国にいるんですか?

き、聞いてませんよそんなこと。何で…?

ルレイア殿が自ら箱庭帝国に来るなんて、きっとただ事じゃない。

「い、一体何があったんですか?『青薔薇連合会』で何か、」

『今すぐ空港に迎えに来てください。一時間以内。それじゃ』

ブチッ、と電話が切れた。

言いたいことだけ言って。俺の話は全く聞かずに。

あまりにも一方的な電話。

一歩間違えたらイタ電である。

普通の人だったら、こんなイタ電を受けたら、「知るか!」と受話器を叩きつけ。

さっさと通話を切り、今後一切無視するのが当然の対応である。

しかし。

「あの」ルレイア殿相手に、そのようなことをしようものなら。

犠牲になるのは俺だけじゃ済まない。最悪、明日には箱庭帝国が崩壊している恐れがある。

誇張して言ってるんじゃない。あの人だったら、どんなことでもやってみせるだろう。

それだけの力がある人だということを、俺は身を以て知っている。

…故に、祖国を守る為に俺が出来ることは一つ。

「…ユーレイリー。ちょっと行ってくる」

せめてルレイア神を怒らせないよう、迅速に、彼の指示に従うことだけである。

電話一本で。まるで宅配ピザを頼むようなノリで。

これが箱庭帝国代表の姿と思うと、我ながら涙が出そうである。
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