「桔梗、いつなら空いてる?」

ひたすらペンを走らせる桔梗の横顔に問いかける。
桔梗と遊びに行く約束が楽しみでたまらなかった。

「別にいつでも。どうせ誰ともどこにも行かねえから。」

そんな悲しいこと言わないでよ。
でも私となら出かけてくれるんだ。
勝手にそんなことを考える。それが少し嬉しかった。

「私もたぶんいつでも大丈夫だけど……」

私はスマホを開いて予定を確認する。
どうせ真っ白なカレンダーのくせに。

「じゃあ、来月の八日」

後ろから桔梗が私のスマホを覗き込んできた。
八日のところにも何もなく、前後に旅行などの予定もなかった。

「わかった。場所とかはまた今度決めよう」

八日のところに「桔梗と初デート」と記入した。
一度は書いてみたかったこと。
私たちの関係は街中を歩いているカップルとは全く別物だけど、お互いの好きは確認済みだ。

桔梗と出かけられると思うと自然と頬が緩んだ。

「楽しみだな」

桔梗も口角が上がっている。
楽しみにしてくれていて嬉しい。

夏の輝く日差しに美しい桔梗の横顔。
想像しただけで心が満たされていくのがわかる。
高校生だな、と感じた。

恋愛に満たされる毎日。
青春らしい時間が幸せで仕方なかった。

夏だ。
きっと来年の夏は受験で大変な頃だろうから、きっとこれが思いっきり楽しめる最後の夏。

さっきよりも蝉の声が近くに聞こえた気がした。
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