花
八月八日。午前八時半。
家を出ると、階段のすぐ下に桔梗がいた。
「桔梗、おはよう」
「はよ」
ずっと楽しみにしてきたこの瞬間。
今までの人生で一番幸せな自信があった。
駅まで行くところはいつも通り。
駅に着いたら、いつもの学校に行くときとは反対方向の電車に乗る。
ホームでそわそわしていると、桔梗に笑われた。
「そんなに楽しみなのか」
「違うよ。私はただ……」
桔梗といるのが楽しいだけ。
言いかけて、恥ずかしくなっちゃったからやめた。
桔梗は続きを気にしてるけど、私は何も言わずに黙っていた。
言いかけただけなのに恥ずかしい。
本物の恋人同士だったらこれくらい素直に伝えられるのかもしれない。
凝った髪型が崩れていないか心配になる。
ちょろちょろ前髪を触って気にしていると、桔梗が鼻で笑いながら言った。
「牡丹、髪型はいいけどメイクとかしねえのかよ」
「メイクはちょっと……」
ほとんどしたことがないから、今日はしてこなかった。慣れないことをして失敗したら大変だ。
「ふうん。まあ、髪型は良いと思うよ」
何その微妙な褒め言葉……と内心少しだけ不満に思う。
褒め方が抽象的すぎるから、本当に褒められているような気がしない。
「その髪型初めて?」
「うん。初めて」
初めての割に良いとか言われるのかと思った。
桔梗は恥ずかしそうにしながら言う。
「俺と会うから?」
「桔梗に、可愛いって言ってほしかったから」
私は言う予定もなかったことを言ってしまう。
恥ずかしさて顔が熱くなる。
「可愛いよ」
桔梗はにやけながらそう言って、私の髪の毛先を指に絡めとる。
距離の近さにどきどきしてしまった。
家を出ると、階段のすぐ下に桔梗がいた。
「桔梗、おはよう」
「はよ」
ずっと楽しみにしてきたこの瞬間。
今までの人生で一番幸せな自信があった。
駅まで行くところはいつも通り。
駅に着いたら、いつもの学校に行くときとは反対方向の電車に乗る。
ホームでそわそわしていると、桔梗に笑われた。
「そんなに楽しみなのか」
「違うよ。私はただ……」
桔梗といるのが楽しいだけ。
言いかけて、恥ずかしくなっちゃったからやめた。
桔梗は続きを気にしてるけど、私は何も言わずに黙っていた。
言いかけただけなのに恥ずかしい。
本物の恋人同士だったらこれくらい素直に伝えられるのかもしれない。
凝った髪型が崩れていないか心配になる。
ちょろちょろ前髪を触って気にしていると、桔梗が鼻で笑いながら言った。
「牡丹、髪型はいいけどメイクとかしねえのかよ」
「メイクはちょっと……」
ほとんどしたことがないから、今日はしてこなかった。慣れないことをして失敗したら大変だ。
「ふうん。まあ、髪型は良いと思うよ」
何その微妙な褒め言葉……と内心少しだけ不満に思う。
褒め方が抽象的すぎるから、本当に褒められているような気がしない。
「その髪型初めて?」
「うん。初めて」
初めての割に良いとか言われるのかと思った。
桔梗は恥ずかしそうにしながら言う。
「俺と会うから?」
「桔梗に、可愛いって言ってほしかったから」
私は言う予定もなかったことを言ってしまう。
恥ずかしさて顔が熱くなる。
「可愛いよ」
桔梗はにやけながらそう言って、私の髪の毛先を指に絡めとる。
距離の近さにどきどきしてしまった。