桔梗はそれぞれが荷物を置いているロッカーの前にぺたんと座っていた。

「ちょっと、何やってるの。次の授業遅れるよ」

クラスに一人はいるよな、お世話される系男子とお世話する系女子。もしくは助けられる系女子と助けてかっこつける系男子。
どっちも同じようなものか。

「ちょっとさ、連れてって」

クールなキャラして何言ってんだよ、と思ったけどいつも桔梗の言いなりになってしまうことには変わらない。


「頭痛い。保健室連れてって」

急に心配させないでよ。心臓が口から飛び出るかと思った。
そんなことを言われてしまったら連れて行ってあげるしかなくて、莉里に軽く事情は説明しておいた。
莉里は桔梗の名前を出した瞬間に「いいよ。私のことは気にしないでいってらっしゃい」と言った。
勘違いされているだろうが、その訂正はあとにすることにした。

「わかったから早く立って」

できるだけ授業に遅れたくなくて仕方なくそう言うと桔梗はやったぁ、と小学生のように喜んでひょこりと立った。

「荷物さ、教室持って行っといて」

教科書と筆箱を渡された。めんどくさい、なんて言えない。
今の桔梗の笑顔は無理して作ったものかもしれない。
保健室まで桔梗のペースに合わせて歩く。
頭痛の話は本当みたいで、歩いてる途中も桔梗は全然話さないし、いつもより歩くのも遅い。

「失礼します」

保健室に入ると、桔梗の顔を見たあんなちゃんがすぐ「島川さんありがとうね」と言った。
よくあることなんだろうけど、にしてもこの先生は慣れている。
桔梗的にもあんなちゃんは信用できる人なんだろう。
桔梗を心配しながらも保健室を後にした。
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