体育祭が迫る中、徐々にクラスはまとまってきていた。髙橋くんとは仲良くなれたわけじゃないけど、前のように喧嘩を繰り返しているわけではない。

何より私は、七海と仲良くなれたのが嬉しい。七海はそれぞれの彼女同士みたいな感覚らしいけど、私は桔梗の彼女というわけではない。
わざわざそれを話題に出すのも気が引けて、七海とは桔梗たちの話をすることはほとんどなかった。

今日は席替えの日。
くじ引きをして、同じ番号の席に座る。
みんなが喜んでくじ引きをする中、私は憂鬱だった。
なんで席替えなんかあるのだろう。
ずっとこのままなら幸せなのに。
余ったのでいいや、と思って席に座ったまま待った。桔梗はスマホをいじっていて、順番待ちの気配もない。
席替えは私にとったらクラス替えと同じようなものだ。またほとんど知らない人に混ぜられると思うと、喉の奥が詰まったような感覚になった。

「嫌なら嫌って、はっきり言えよ」

声がして桔梗の方を見たけど、桔梗はスマホを見つめながら話していた。
今ぐらい顔見てよ、と思ってしまう。
席替えごときで、と思うかもしれないが、わざわざ休み時間に話すほど私たちは仲が良いわけではない。話せる人が一人もいないなんてことになったら、私は一年生に逆戻りだろう。

「別にいいじゃん。席離れても話せば」

それを簡単に言える桔梗の無神経さが羨ましい。

「俺と離れるの、そんなに嫌?」

この質問は悪意しかない。
いじわる、と言い放って私は席を立った。
私だって、桔梗と離れるのが嫌なのか、知らない人に混ざるのが嫌なのか、わからない。
どっちもあるだろうけど、とにかく私は、桔梗の隣の席が幸せだった。
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