27番の席。
荷物を持って移動すると、先に隣には人が座っていた。話しづらそうな、眼鏡をかけた男の子。

「よろしく、お願いします」

緊張のあまりに声が出ない。相手は会釈しかしないし、話しかけてくる気配もない。
気まずいな、と思いながら桔梗の姿を探した。

桔梗は一番窓側の二列目で、隣は、七海だった。
嫉妬とかじゃないけど、なんとなく悔しい。
いや、たぶん今は私より髙橋くんの方が嫌な思いをしているだろう。

七海は笑顔で話しかけているが、桔梗は全く気にしていない。
いつも通りにスマホの画面とにらめっこをしていた。
なんだかそれに安心してしまって、こんなことを考えてしまう自分が許せない。

早く席替えをしたい。
桔梗の隣じゃなくてもいいから、七海と桔梗の席を離してほしい。
七海に桔梗を取られちゃいそうで怖かった。
桔梗はせっかく私が手にした大切な友達なのに。
いや、七海だって大切な友達だ。

莉里はというと、隣の男の子と楽しそうに話している。莉里はモテるだろうな。
愛想がよくて、人と話すのが上手くて、聞き上手でもある。
どれだけ憧れても、届かない存在だ。
それは七海も同じで、彼氏の敵だからといって私を遠ざけるのではなく笑顔で話しかけてくれた。
すごく、優しい人なんだと思う。

その日はずっと先生の話なんて聞かずに桔梗と七海を見つめていた。
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