私を桔梗の彼女だと勘違いしているにも関わらず、七海は桔梗との距離を縮めようとしていた。

二人が話している様子を見せつけられているような気がしてしまって、桔梗ばかり見るのもやめてしまった。

今なら髙橋くんと分かり合える気しかしていない。

席替えから二日後。
体育祭まで二週間となった日の、昼休みのことだ。

久しぶりに学級委員の仕事がなくて、ゆっくりできる日だった。

桔梗は仕事をほとんどしないから、私の負担が増えて最近は休みがない。
やっと暇になって、一人でお気に入りの本を読んでいた。

「前失礼しまーす」

休み時間になると、前の席の男の子は友達と話しにどこかへ行ってしまう。
空いている席に座ってきたのは、イヤホンで音楽を聴く桔梗だった。

「何しにきたの?」

嫌なわけではないけど、驚いて聞いてしまった。
桔梗はイヤホンは片耳派なので、私の声も聞こえたようだ。

「最近話してなかったから」

質問と若干ずれた答えが返ってきた。
ふうん、とだけ返事をして、私は本に戻った。

かといってお互い話を振るわけではない。
桔梗は音楽を聴き、私は本を読む。

それだけだったけど、なんとなく満足感のある昼休みを過ごした。
< 35 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop