社内捜査は秘密と恋の二人三脚
「……北村さん」
「はい」
「……ただ、捨ててくれるだけでいいんだよ。頼むね」
じろりと私を見ていなくなった。私はびっくりしてなにも言えなかった。
扉の閉まる音を聞きながら立ち尽くした。もしかして、気づいた?どうしよう。でも、しょうがない。計算しないと気が済まない。全部やったらびっくりした。一千万円以上になっている。
急いで鈴木さんにメールだけする。計算した金額と美術館が複数に渡ること、今月分で証拠は私がコピーしておくと書いた。
急いで同じやり方で溶解の箱を詰め直して、階下へ運んだ。証拠は鍵のある応接室のパーテーションの裏。布を張って見えないようにしている。
人影を感じて後ろを見たが誰もいない。敏感になってしまっているのかもしれないと急いで戻った。
午後、専務は戻ってきたが何も言わなかったので私はすっかり安心しきっていた。