社内捜査は秘密と恋の二人三脚

「ああ、もちろんです」

 そう言うと、文也はいなくなった。

 翌日。どうしても午後から捜査状況の説明を兼ねたミーティングに出ないといけなくて、氷室商事本社へ戻ってきた。

「ああ、賢人。話を聞かせてくれ、忙しいところ済まないな」

 役員室で専務の氷室陽樹と向き合って話す。生粋の御曹司。見た目も良いからモテる。しかし既婚者だ。

 俺の親友だが、今は上司。高校からの知り合いだが、高校卒業時に俺の実家の会社に入ってくれないかとスカウトされた。

 あいつはいずれこの氷室商事の社長になる。俺はやりたいことがあったわけではなかったので、とりあえず考えておくとしか言わなかった。

 だが、大学二年の途中に氷室商事の社長である陽樹の父親とあちらの策略に乗せられて話をする機会を作られた。
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