社内捜査は秘密と恋の二人三脚

 本当に文也には勝てない。こいつは昔、俺と同じ部署にいて働いていた。

 前社長から可愛がられて色んな隠密仕事を任されて結局ここへ落ち着いた。ここは氷室商事の情報部。

 こいつはその部長のようなもんだ。だが、社内に部署はなく、存在を知る者も限られている。

 何を言ってもこいつには勝てない。諦めた。だが、こいつの判断に狂いはない。そこがむかつくところだ。

「里沙を連れていく。どのくらい飲ませた?」

「それがさあ、少し強めのカクテル二杯。彼女弱いねえ。でも来たときも顔色悪かったから寝不足だったのかもしれないな、誰かさんのせいで最近眠れなかったんだろうし……」

 伏せて寝ている里沙の頭を撫でた。
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