社内捜査は秘密と恋の二人三脚

「……確かに、それは言える。私達、本当に危なかったよね。親には絶対話せない。あのときは、斉藤さんが連絡してくれたから助かったよ」

「そうじゃないでしょ。それだけで場所わかるはずないじゃないのよ。だって、すでにバーを出てしまっていたのに、どうしてあの二人はすぐにホテルの部屋がわかったと思ってたの?」

 そういえば……そうじゃないか。私、頭がパニックですっかりその辺のこと考えていなかった。

「北村さん、鈴村さんに位置情報がわかるアプリ入れさせてたらしいね。いやはや、関根課長も驚いてた。最初からあなたに下心あったんじゃないかって笑いながら言ってたよ」

 グラスの氷を回しながらあのときの彼の台詞を思い出す。お酒の中で回って小さくなっていく氷は外を見ていても危険はない。グラスの外に飛び出すなと言ってたっけ。

 私がグラスから飛び出すんじゃないかってきっと最初からわかっていたんだね。だからアプリを入れさせたり、文也さんに紹介してくれたんだろう。何かあったときのためだったんだ。
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