社内捜査は秘密と恋の二人三脚

「そうなんですよ。私は会計部が好きでしたのでここだけの話、そっちの方が良かったんです」

「あはは。秘書室の人はここへ来たがっているし、うらやましいと思っている人も多いと思うよ。ここは僕が言うのもなんだけど、出世頭の人が多い。将来約束されてる部署だし、鈴村さんなんて氷室家と縁談があったくらいだよ」

「……そうですか」

「それがさ、何故か知らないけど最近破談になって、秘書室の連中が一挙に鈴村さんへ押し寄せているらしい。今までは社長に遠慮していたのが、縁談がなくなったからね。彼女に立候補したい人が大勢いる。きっと重役を約束されているし、まあ俺が女なら気持ちはわからないでもないよ」

「……そうなんですね」

 私はグラスをギリギリと握りしめた。彼は忙しいらしく連絡が取れていない。自販機のところで話したのが最後。美人の若い秘書を連れて歩いていた。思い出すだけで腹が立つ。
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