社内捜査は秘密と恋の二人三脚

「北村さん?」

「あ、すみません。そろそろ帰りましょう。いいですか?」

「あ、うん」

 アパートまで送るという相模さんを押しのけて、繁華街を離れ別な場所を目指した。このままで帰るときっとアパートで泣く羽目になる。

 今日は金曜日だから、実は彼に昨日のうちに連絡もらえるかと期待していたけどそれもない。忘れかけてた縁談の話や、秘書室の人のはなしを相模さんから聞いたせいで悔し涙が出てきた。

 まだ八時半。映画館へ向かった。泣きたいときは映画館。私は昔から大泣き出来る映画を選んで後ろで泣く。映画はほとんど見ていない。ただ、泣きに行くだけ。実家にいたとき、泣き顔を家族に見られたくなくてやり始めた方法。今でもそうなのだ。

 すでに始まって三十分以上経っているが、丁度いい悲恋映画を発見。途中からでいいですかと聞かれたが頷いて入った。

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