社内捜査は秘密と恋の二人三脚

「賢人ったら……そんなに怒らないの」

 社長室を出た賢人は怒り心頭。

「あの社長、俺がやめてもいいんだな。里沙をこんなことに使うなら本当に転職してやる。一緒に辞めよう、里沙」

「落ち着いて、賢人。大丈夫だったし、もうやらないから。きっと大丈夫よ。それに賢人だってやっとお仕事楽しくなってきたんでしょ?」

 賢人はため息をついている。最近ようやく営業の年配の人達とうまくやっていけるようになったとこの間言っていたのだ。

 自分が上に立ってやっていけることが増えたと嬉しそうに言っていたのに、転職なんて……どこへ行ったって、この歳で今と同じ仕事なんて任せてもらえない。起業しても数年はうまくいかないのが普通だろう。
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