社内捜査は秘密と恋の二人三脚

 私が会計部のカートを取りに行ったとき横を通ったら、一瞬目が合った。エレベーターホールのほうへ行ってしまった。

 鋭い目。見た目と中身が違う人?ちょっとびっくりした。一応お辞儀をしながら通り過ぎる。

「ああ、北村さん。まだいたの?今日は専務昼から外出だったのに。ご苦労さんだね」

 部長がにこやかに声をかけてくれた。

「はい。専務がいないときしか出来ないこともあるので、ちょっと夢中になってたら遅くなりました。さっき、フロアを出て行った男性がいましたが、誰ですか?」

「ああ、彼は明日から応援で入ることになった鈴木賢人君だ。北村さん、彼は関連会社にいるんだけど、会計士の資格も持っていてね。頼んで監査前に入ってもらったんだ」

「すごいですね。それは助かりますね、部長」

 部長は嬉しそうに笑った。
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