社内捜査は秘密と恋の二人三脚

 何?何なの?ボソボソと話しているのを他に聞かれたり、私の存在がばれるとまずいと思ったので、とりあえずカートを外のドアから見えないところへ引いて隠した。

 そして、私はまた部屋のドアをそっと開けて、身を中へ滑らせて声のする方へゆっくり歩いて行った。

 靴を変えてきたのが正解だった。音がしない。

「よし、これでいいだろう」

「おい、間違えて捨てないように何か書いておいた方がいいんじゃないか」

「そうだな。これは廃棄しないことって書いておけばいいか。とにかく隠そう」

 ガサガサ音がする。これは絶対やばい案件だ。不正らしき金額を耳にしてこのままではいられない。会計部魂で正義感からこの発言の主がだれか確認しようと思い、前へ出ようとした。

 すると大きな手で口を押さえられて、目の前に黒縁眼鏡のボサボサ頭の会計部のフロアですれ違ったあの人が現れた。さっき部長が話していた、明日から入る会計士の人だ。人差し指を口の前に立てて『しーっ!』と私に言っている。
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