社内捜査は秘密と恋の二人三脚
私は驚いたがとりあえずこっくりうなずいた。すると彼は私の口の前の手を離して、しゃがむようにジェスチャーで示した。ふたりで息をのみながらしゃがむと彼が匍匐前進するのでついて行く。
目の前にはワイシャツ姿の男性ふたりの背中が見えた。ひとりは取り出したファイルを他の箱へ入れて、もうひとりは段ボールの蓋をガムテープで留めている。ふたりは仕事が終わるとそろって立ち上がり、出口へ向かっていく。
「おい、鍵しなかったのか?」
「お前知らないのか?ここオートロックなんだよ。外からは鍵がないと開かないけど、うちからは開けられるんだ」
「へえ。そうだったんだ」
「これだから、ずっと営業だったお前はいいよな。ここに荷物運ぶのとかやったことないんだろ?デスクワークの部署は一年目絶対ここで仕事してる」
そう言いながら二人は出て行った。
私はふたりの顔が見たくて立ち上がりたかったのに、彼に手を握られて立ち上がれなかった。私達は二人そろって大きなため息をついた。
お互いで顔を見合わせる。すごい至近距離だった。びっくりした。彼も急いで私の手を離して立ち上がった。