社内捜査は秘密と恋の二人三脚

 入り口に戻って電気をつけた。

「君……何しに来たの?」

 低い声でその男が私に言った。

「それは私の台詞です。社外の人なのに、ここにいるってどういうこと?あなたこそ何しに来たのよ!」
 
 胸を張って睨む。どうして私が詰問されなきゃならないのよ。どう考えたってあなたの方が不審者よ。すると、ふっと彼が下を向いて笑った。何なの?

「ずいぶんと強気なお姉さんだ。さっき会計部のフロアで部長と話してたの君だろ。えっと名前は……」

 首から下がっていた社員証を彼の目の前に持ち上げた。

「ああ、失礼。会計部秘書の北村さんね。で?君の荷物はどこにあるのかな?」

「外にあります。変な話し声がしたので、隠して見に来たの」

 驚いた顔をしてる。すぐに険しい顔に戻った。

「馬鹿だな。危ないだろ。さっきの連中に見つかってたらどうなってたかわかんないぞ」
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