受験日和です。

第七話。模擬試験

県立高校入学試験の、模擬試験とやらだ


秋は、文化祭に美術部員として作品を出してしまった。
小さな男の子? みたいな絵だ

美術が5で、二年生の時部長だった日南子に

「いち子は、いい絵を描く。もの凄く上手い絵、という訳では無いんだけど」

と言われた


もの凄く上手い絵という訳では無い

いい絵


私の人生みたいだ。と思った

もの凄く何かが良く出来るという訳では無い

伊東は、いい奴。といつも言われる(ような気がする)

絵の男の子というのは、
何となく、
神様みたいな、天使みたいな
そういうイメージで描いていたら
いつの間にか男の子になってしまった

そんな思い出

はっとした

模試の日に、文化祭の思い出に(ひた)る私

学級委員も、順調だった
男子の方の小林が色々教えてくれるし。

小林の良い所見つけた!
声が高い!!

そう言えば学級委員会の合間に小林が、妙な事言っていたような
数学は実は国語の問題。文章をしっかり読めば、半分は見えて来る。

見えて来る

か…


「今日は練習の気持ちで」

隣の日南子が言った

「うん。そうだね。」

それぞれの席へ散った

途中お弁当休憩を挟んで、長い一日が終わった
日南子は、私の受ける予定の西泉高校と、神奈ケ崎高校の間のレベルの県立南高校を受けると言っている

「はぁーあ。短い中学校生活も終わりかぁ。高校行ったら仲良しクラブ解散! 翠は私立だし。」

日南子がそう言った。

「翠が陸上部で仲良くしてる、サリってどうなの? あれっ今日居た!?」

「サリかぁー。何か高校卒業して、お母さんの店? 手伝うとか言ってたよね。今時、時代錯誤だよね。」

「サリのお母さんって、カレー屋さんだよね。確か。うーんどうしよう」

「サリの事、心配?」

「私今夜、サリのお母さんのカレー屋に、ママと一緒に行ってみようかな」

「どっひゃー。出た。伊東の謎の学級委員根性」

「いいの、いいの。もうすぐ終わるんだし。この際だし」

「いいんじゃん。いち子のお母さん、サリ並みに美人だし」

「あはは、何それ!」

「わっきゃー」

「いいじゃん日南子だって痩せてるんだし。」

「それは、努力!」

「わー」

「修学旅行にメロンパン食う奴居るー?」

「んもう、良く覚えてるよね。」

「あはー。私には足りないんですぅ」

「怒るよ! 日南子!!」

行きが緊張していただけに、帰りは大騒ぎだった


私は有言実行という意味で、
ママと仲良しのサリのお母さんの店に行った

インドのお香みたいな匂いのする店だ

「いらしゃいませー」

サリのお母さんだと思った

「あの、中学校の、サリちゃん居ます?」

「ああ、サリね。今勉強」

「お母さん、うるさいんだけど」

サリが駆け降りて来た。

「サリ、今日模試だったんだよ」

「ああ、あれね。今うちお金なくて。模試代もったいないから、行かなかった。でも高校は行くよ。ちゃんと」

「良かったー」

「あはは、心配してた? 別に模試受けたからって、成績上がる訳じゃねし。別に良くね?」

うーん大らかなのは、サリだと思った
模試を受けても成績は変わらない
確かに

「じゃね。」

サリは言った

「うん」

カレーを食べてホクホクだった
私は、
家庭の事情で模試を受けられない。
そういう友達だっている
自分一人で生きている訳じゃないんだ
そう思った

何故か
サリの幸せを、願ってしまった

家に帰るとパパが
昨日の残りのカレーを、温めながら

「二日目のカレーだね。」

と言っていた

どうしよう
本当に
ママが居て
パパが居て
普通に生きている
どこも痛かったりはしない
勉強する時は、
エアコンだって有る

何故
当たり前だと思ったんだろう

生きていると
こういう事の繰り返しだ

人間が大切

時々ふと思う
弟がもし居たらと

二人分なのかも知れない
私は大切なんだ
そう思える世界でありますように
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