絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする
冬上怜からのメッセージ。どうして彼が私の番号を知っているか疑問だけど、同じ会社なんだし、事情が事情だから誰かに聞いたとしても不思議じゃない。

助けてくれた人にお礼はしようと思っていた。それが偶々社内の人だったっていうだけのことだ。

「はい」

コール三回目で冬上怜は出た。低い声だ。

「あの、私、経理部の真下と申します。この度は助けて頂いて、ありがとうございました」

少しだけ声が上擦った。全く知らない相手より、かえって緊張した。

「今日病院に行ったら退院したと聞いてね。人事に君の連絡先を聞いたんだ。勝手に個人情報を聞き出したことは先に謝っておくよ。申し訳なかった」

やり手で冷酷。完璧主義。彼の話し方はそんな風に言われてる印象とは違っていた。でも話し方までそうだったら、営業でいい成績をあげられるわけもないのかもしれない。

「いえ。冬上さんにはお礼を言いたかったので…。名刺を頂いていたのに、こちらから連絡するのが遅くなってしまって、却って申し訳ありません。助けて頂いて本当にありがとうございました。冬上さんが助けてくださらなかったら、命があったかどうかも怪しいので…」

「名刺を置いていったのは俺の勝手だから、真下さんが謝る必要はない。それと命があったのは真下さんの運が良かったからで、別に俺のおかげじゃないから」
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