絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする
やってみなければわからない。
冬上さんの言うことは確かに最もなんだと思う。だけど…。

それは安全じゃないかもしれない橋を、確かめずにとりあえず渡ってみるということ。私にはとてつもなく高い高い壁だ。

それでも会社という組織に入っている以上は、営業部への異動自体は仕方ないと思っていたし、低空飛行で自分なりに頑張るつもりでいた。

だけどやっぱり。冬上さんと組むとなれば、会社内で注目の的になってしまうのは必然で。それは怖いし、こんな完璧な人についていける自信は微塵もない。

「ともかく。君には営業部に来てもらう。引き継ぎもあるところ悪いが並行して頭に入れておいて欲しいものもあるから、復帰したら一度君のデスクに行く。悪いが来客が来たから、これで失礼する」

黙っていたままの私に、きっと痺れを切らしたんだろう。最後はため息混じりの言葉だった。

自分が不甲斐ないのはわかってる。だけど、冬上さんみたいに、どんなことにでも対応できるような人には到底、私の気持ちなんてわかるはずがない。






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