絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする
「そうか。それではこれからする話は、君にはあまり良くないことになるな」
「良くないこと、ですか?」
「ああ。非常に急な話で申し訳ないが、君に異動の話が来ていてね。本来なら人事から話すべきだが、時期的にも異例だから私から伝えることになったんだ」


こんな中途半端な時期に異動なんて、何か問題が起きた時か、急遽退職する人や長期の病休とかが出たとしか思えない。
だけど理由なんて関係ない。部長から話が来たということは、私が異動するのはもう決定事項なんだ。


今まで、仕事に手を抜いたことは一度もなかった。コツコツと積み上げてきた自負はある。だから、どこかで期待していた。経理部にとって、自分はなくてはならないピースの一つになれてるんじゃないかって。


とんだ勘違いもいいところだった。別に私の代わりなんていくらでもいるって事実を正面から突きつけられた気がした。

「それで、私はどこの部署に移るんでしょうか」

部長に今さら何を言ったって決まったことが変わるわけじゃない。会社はそういうところだ。だから、これからの話をするのが正解なんだろう。

部長の眉尻が少しだけ下がった。私が駄々をこねるとでも予想していたのかもしれない。

「理解が早くて助かるよ。君の新しい席は営業部に用意されているよ、真下さん」


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