絶対零度の御曹司はおひとり様に恋をする

立て続けに検査を受けた結果、とりあえず経過を観察することになった。しばらくは安静に過ごすよう注意書きを書いた紙を貰い二日後に退院した。


築55年の古い借家が私の住まいだ。大学を卒業して家探しをした時、勧められたのは綺麗なワンルームのマンションばかりだった。確かにセキュリティはしっかりしているし、女性の一人暮らしを考えると、普通はそういう物件を選ぶのかもしれない。でも私はこの家を選んだ。


家賃が安い上に間取りも広くて、DIYをいくらしても構わないっていう条件が決め手になった。


シャワーを浴びてからベッドに横になる。
見慣れた古い天井にホッとする。妹の沙優は泊まりに来ると、顔に見えるとか言って怖がるけど、私にとっては安心材料だ。


いつの間にか寝ていたらしく、目が覚めるとテレビが付けっ放しだった。日曜日の夜にお馴染みの国民的アニメの歌が流れていて、それで時間が分かった。


喉がひどく渇いていたので、起き上がって水を飲み飴を舐めた。まだ少しだけ頭痛がある。スマホを確認したら登録していない番号からの着信があって不思議に思っていると、SMSの方に同じ番号からメッセージが入っていた。


『真下紗凪様 退院されたとのことで、連絡させていただきました。お話したいことがあるので、折り返しご連絡をお待ちしています。営業部 冬上怜』
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