猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
ホッとしたら今度は涙が出てきた。
ボロボロとこぼれだして止まらない。

こんなに不安を感じたのは久しぶりの経験だった。
「どうしたんだよミーコ、そんなに泣いて」

猫が涙を流すのは珍しいことなのだろうか。
健一は困り顔でミーコを抱いたままソファに座り込んだ。

そのままふぅと大きくため息をつく。
その息に乗ってやはり妙な匂いを感じ取る。

甘いような少し苦いような、なんと表現すればいいかわからない匂い。
だけどどこかで嗅いだことのある匂いだ。

それがどこで、どんなときに嗅いだ匂いであるか、思い出した瞬間尚美はサッと血の気が引いていった。
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