猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
あれは5年前。
尚美のおばあちゃんが入院したときのことだった。

ひとり暮らしをしていたおばあちゃんが家で倒れて救急搬送されたとき、すでに末期がんを患っていた。

家族でお見舞いへ行った時にかすかに感じたあの匂いとよく似ている。
これは……死の匂いなんじゃないか。

猫になった今、尚美はその匂いを敏感に感じ取っているんじゃないか。
「ミャアミャアミャア!」

火事のときと同様に激しく鳴いて健一に危険を知らせようとする。
けれど健一は今日は一段と疲れていてその声に反応してくれない。

「ごめんよミーコ。今日は疲れてるんだ。遊んでやれない」
「ミャアミャア!」
< 127 / 219 >

この作品をシェア

pagetop