猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
一本入った場所が飲食店街になっているから、そっちへ行けばなにか食べられるかもしれない。
最後の体力を振り絞って再び歩き出そうとしたとき、体がフラリと揺れた。

そういえばこの猫はいつからご飯を食べていないんだろう。
私が助けたときにはもう何日も食べていなかったのかもしれない。

だとすれば、もう……体力が……。
ドサリと小さな体が横倒しに倒れる。

これが人間ならすぐに誰かがかけつけてくれるだろうけれど、今の尚美はただの猫だ。
小さな命が潰えようとしても、それに気がつく人はいない。

手足に力が入らなくてだんだんとまぶたが重たくなってくる。
公園では全く眠ることができなかったのに、こんなに簡単に眠れるなんて。

「おや、どうしたんだ?」
そんな声が近くで聞こえてきたような気がしたけれど、尚美はそのまま目を閉じてしまったのだった。
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