猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
父親の言葉に反応して母親が聞く。
ガン!?

尚美の心臓がドクンッと跳ねて止まりそうになってしまう。
あのとき、おばあちゃんのお見舞いへ行った時と同じ匂いがした。

おばあちゃんは、末期がんだった。
「胃ガンだ。でも一部を切除すれば大丈夫らしい」

医師にも説明を聞いたのだろう、父親がしっかりとした口調で言った。
胃ガン。

日本人のガンで多い部類に入るものだ。
朝から番まで働いて、帰ってきて適当に食べて寝る。

そんな生活を続けていた健一のことを思い出す。
会社での立場もあるし、独り身で食生活が乱れていたことも関係しているのかもしれない。

尚美はジッと自分の前足を見つめた。
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