猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
もし自分が人間でいられたら、料理くらいいくらでもしてあげることができたのに……!

「兄貴は冒険家だからこの家にすがりつくこともせずに自力であそこまでのし上がってきたんだ。その結果がこれかよ」

弟さんが悔しそうに唇を噛みしめる。
やっぱり、この家はなにか企業をしているのだろう。

ここにいて守られていれば負担がかかることはなかったはずだ。
それでも健一は自分の道を突き進み、そして毎日あんなに優しくしてくれいたんだ。

そうと分かると涙が滲んでくる。
優しいあの人をどうにかして助けてあげたいと願ってしまう。

「健一が務めているのは自社の小会社だ。そこから引き抜くことはできる」

「そうだな。兄貴が落ち着くまではこっちの手伝いをしてもらったほうがいいと、俺も思うよ」

そんなことをしたら、会社で健一に会えなくなってしまう!
そんな不安が一瞬よぎったが、今尚美は会社に行ける身ではない。

それにやっぱり健一にとってなにが最善なのか、考えるべきだった。
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