猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
そう……なんだ。
元々自分には縁遠い人だった。

小会社の中だといっても地位のある人だし、人望も厚くて人気もある。
そんな人とこうして一緒にいられていることが奇跡だったんだ。

いずれバラバラの道に戻ることはわかっていたはずなのに。
胸の奥が苦しくて仕方ない。

いかないで。
ずっとそばにいて。

そんなふうに考えてしまうようになった私はきっと、わがままだ。
関さんの猫として飼われることで、もう十分なはずなのに。

「健一の手術が始まったようだ」
その声にハッとして振り向くとお父さんが立っていた。

いつの間にかお母さんも座っている。
「もう、食事が手につかなくて」
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