猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
と、シワのある手で顔を覆い隠す。
そんなお母さんに寄り添うようにして義理妹さんが座り込んだ。

今日はみんな気が気ではない様子だ。
ただ1人、弟さんの姿がないのは病院へ行っているからだろう。

大勢で押しかけたところでできることは少ない。
邪魔にならないように行くのを我慢したのだとわかった。

「もし健一になにかがあったら……」

「きっと大丈夫ですよ。健一さんには元気になってもらわないと、私も困るんですから」

義理妹さんに励まされてお母さんはどうにかため息を吐き出した。
それでも室内の重たい空気は消えない。

手術は何時間くらいで終わるんだろうか。
予定通り進んでくれればいいけれど。

1度、義理妹さんがお茶を作りに席を立った意外はほとんど会話もなく時間だけが過ぎていく。
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