猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
横断歩道にさしかかったとき、沢山の車が行きかいそのタイヤが目の前と通り過ぎていく光景に冷や汗が出た。

信号をよく見て渡れば大丈夫だとわかっていても、小さなこの体に気が付かずに突っ込んでくる車だってあるかもしれない。

グルグルと拘束で回転しているあのタイヤに巻き込まれてしまえば一発で終わってしまうだろう。

私が助けたこの子も、きっとこんな恐怖を味わっていたに違いない。
それでも自分の親や兄弟がいる場所へ向かおうとしていたんだろう。

湧き上がってくる恐怖心を押し込めて青信号を渡り始める。
数人の通行人たちが尚美へ好奇心の目を向けてはそのまま通り過ぎていった。

人々の足音や話声がとても大きく聞こえてきて、それだけでメマイを起こしてしまいそうになる。

それに加えて排気ガスの匂いが鼻腔を刺激して、鼻がバカになってしまいそうだ。
それでも足を前へ動かす。

信号はまだ青だ。
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