猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
☆☆☆

私を撫でてくれる優しい手は、部屋に戻ってもパソコンを叩いているようになった。
私に頬ずりをしてくれる頬は、いつも厳しくひきつるようになった。

次期社長としての心構えができた健一は以前よりも更にハードな生活を送るようになっていた仕事量が膨れ上がり、その間に次の仕事を覚えていく。

だけど食事には気を使うようになっていた。
こんな大切な時期にまた病気でもしたら大変なのは健一だけでは済まされないからだ。

食生活がマシになったことは良かったと思うけれど、仕事が増えてほとんど休みがなくなってしまったことは尚美にとって気がかりなことだった。

部屋に戻ってきてもすぐに仕事を再開させてしまうから、一緒に遊ぶ時間はなかった。
また遊ぼうって約束したのに。

そんな不満が胸の中に膨らんできてしまう。
ダメダメ。

これは健一の将来のためなんだから、今は我慢しなくちゃ。
仕事が落ち着けば、きっと前みたいに遊んでくれるんだから。

そう思ってクッションの上で丸くなり、眠ったふりをした。
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