猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
ふと気がつくと健一がソファから立って玄関へ向かっていた。
なにか、注文していた商品が届いたみたいだ。

玄関先で配達員の人と軽く会話をしているのが見えた。

あぁ、あのドアの隙間から外へ出ることができれば、またひとりになれるのかな。

もうなにも期待せず、悲しまずに生きていくことができるのなか。
そんな風にぼんやりと考えていただけだった。

実際に行動に移したりはしない。
だって、外がどれだけ怖い場所なのか、もう知っていたから。

健一の実家から病院まで行くこともできなかった自分が、野生として生きていくことなんてできるわけがない。

それなのに。
気がつけば尚美は全速力で走っていた。
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