猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
今度だってきっと大丈夫だと自分に言い聞かせるけれど、やはり体は動いてくれなかった。

その場ですくんでしまって動けない。
あぁそうか。

あのときは今以上に必死だったから動くことができたんだ。
ふと、そう理解した。

病院へ行って健一に会いたい。
その気持の方が今よりもずっとずっと大きかったから、横断歩道が平気だったんだ。

そう気がついたとき、心の奥で燃えていた炎がジュッと音を立てて消えた気がした。
勢いで逃げ出してきてしまったけれど、やっぱり自分1人で生きていくことなんてできないんだと。

落ち込んでうなだれていたところに「子猫ちゃん、どうしたの?」と、声をかけられた。
見上げてみると女子高校生が透明傘を差し掛けてくれている。
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