猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
☆☆☆

どれくらいの時間ベンチの下で震えていただろうか。
雨がやむ気配もなく降り続き、体温はどんどん奪われていく。

このままだと死んでしまうかもしれないという不安が脳裏をよぎる。
それならそれでいいかもしれない。

現実の尚美の体がどうなっているのかわからない今、子猫の体を借りているに過ぎないのだから。

子猫から体を奪ってしまうのは申し訳ないけれど、これも運命か……。
諦めて目を閉じたときだった。

すぐ近くでうぅ~と低い唸り声が聞こえてきて尚美はハッと目を開けた。
振り向くとベンチのすぐ近くに野生の犬がいることに気がついた。

犬はこちらへ向けて唸り声をあげ、牙を向いている。
尚美は咄嗟に身構えて犬を睨み返した。

どうして?
いつもはすぐに気配や匂いで気がつくはずなのに。
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