猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
こんな姿本当は恥ずかしくて嫌なのに、なんだか本能に抗えない気分がする。
「はいはい、もう1本だけね」

健一がジャーキーを差し出すとそれを奪い取るようにして自分の元へ引き寄せ、地面に押さえつけて噛みちぎる。

あぁ、これじゃまるで野生児だ。
こんな姿を憧れの上司に見られているなんて恥ずかしくてたまらない。

だけどお菓子を止めることもできなくて、あっという間に食べ終わってしまった。
それでもまだなにか残っていないか鼻先でくんくん部屋の中の匂いをかぐ。

その姿を見て健一が「もうないよ」と笑った。
こんなにいやしい姿を見ても笑ってくれているなんて、なんて優しい人なんだろう。

自分が子猫になっていることをすっかり忘れて健一のことを惚れ直してしまう。
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