猫に生まれ変わったら憧れの上司に飼われることになりました
サッと全身から血の気が引いていく。
外がとても遠く、手の届かないもののように見えた。

食器棚の中でパニックを起こした尚美はその場で飛び跳ね、ミャアミャア鳴いて暴れてしまったのだ。

扉に体がぶつかった瞬間外へ出ることができたものの、調味料や皿が一緒に散乱してしまい、今にいたる。

だって、私は料理がしたかっただけなのに。
なにもできない。

この体じゃお礼なんてなにも。
泣き出してしまいそうになったとき、玄関が開いて健一が帰ってきた音が聞こえてきた。

尚美はビクリと体を震わせる。
か、帰ってきちゃった……。

この有様を見て関さんはなんというだろう。
< 72 / 219 >

この作品をシェア

pagetop